|
50年に1人のジャズの逸材と呼ばれる歌姫……。
この春、アルバム「魂Kon」で鮮烈なデビューを飾った安富祖貴子のファーストライブが4月17日、渋谷のJz Bratで開催された。
深く豊かな歌声に魅せられたライブの一部始終をレポートしよう。
ステージに上がり、軽やかにインストゥルメンタルのナンバーを奏で始めたのはピアノの安井さち子、ドラムスの大隅寿男、そしてアルバムのプロデュースもつとめたベースの井上陽介のトリオ。それぞれのソロ・パートで豊かな技量をあらわし、観客の期待を高めたところで、いよいよ安富祖貴子が登場した。フリンジとスパンコールが、スウィングするたび美しく揺れる黒のドレス姿。笑顔をたたえてマイクに向かい、ビートルズの「ヒア・カムズ・ザ・サン」を歌い始める。ひとつひとつの言葉に感情の詰まった、まさに魂の歌声。デビューアルバムを聴いて集まった人々も、初めて触れる“生”
の安富祖貴子のヴォーカルに、みるみる引き込まれていった。
「昨年の春、ジャズライブというものに触れ、大人のミュージシャンたちが繰り広げる素敵な世界に感動したのがJz Bratでした。そして今、私自身がアルバムをリリースし、この場所に立っています。今日がスタートです」という挨拶の後に、ボブ・デュランの名曲「ジャスト・ライク・ア・ウーマン」そしてドラマティックで力強い「モーニン」を熱唱。
「いつも歌う時はお水しか飲まないのですが、今日はキリンラガークラブだから」と、キリンラガービールで客席に向け乾杯するチャーミングなアドリブも披露する。ジャズの奥深さに気付くきっかけになったという「エヴリシング・マスト・チェンジ」を終えてステージに呼び入れられたのは、サックスの川嶋哲郎。「スムース・オペレーター」では、伸びやかな安富祖貴子の歌声を、サックスの音色が増幅させる。
ビリー・ホリデイの「アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー」に続き、ファンキーに締めくくりたい、と、エンディングは「ワーク・ソング」。途中のMCで「緊張しています」と語っていた彼女だが、歌詞やリズムに合わせてのアクションも大きく、自由にジャズを楽しんでいるように見えた。
ビヨークやジャミロクワイなど、今やビッグ・スターに成長した海外アーティストの初来日公演も数々展開してきたキリンラガークラブだが、今夜のライブもまたミュージック・シーンで語り継がれていくに違いない。その歴史的瞬間に立ち会った観客たちからの拍手とアンコールの声に応えて、再びステージへ。自身の感慨をひとつひとつのフレーズに織り込むように、大切に、丁寧に、「テネシーワルツ」を歌い上げた。
客席だけでなく、ステージ上のメンバーたちまでが惜しみない拍手を贈った、安富祖貴子のファーストライブ。
新しい歌姫の誕生に、キリンラガービールで、乾杯。
|