KIRIN LAGER CLUB年末の恒例企画となりつつあるBellows Lovers Night。
過去4回は、アコーディオン・バンドネオンの注目アーティスト達が各々のユ
ニットで登場し、独自性溢れる音楽を披露するスタイルだった。しかし今回は今までの
スタイルを一新。「今年はアコーディオンとバンドネオンのみで演奏します」のcoba
の言葉とともに、蛇腹サウンドの原点に立ち返ったライブの幕が開いた。
Bellows Lovers Nightは、1822年にドイツのクリスチャン・フリードリッヒ・ブッシュマンがアコーディオンの原型である蛇腹楽器を発明してから、180年目を迎えた2002年にスタートした。日本屈指のアコーディオニストであるcobaの呼びかけにより数多くのべローズ(蛇腹)プレイヤーが集結し、生誕200年となる2022年までの20年間にわたりカウントダウンライブを行なっていこうという一大プロジェクト。クリスマスを目前に控えた2005年も、多くのファンが横浜赤レンガ倉庫に集まった。
熱のこもったリハーサルに開場時間はやや遅れたものの、バーカウンターのあるホワイエには、入場の際に配られたドリンクチケットと引き換えにキリンラガービールで喉を潤す人々の姿があふれている。しばらくするとにぎやかな音色と共にアコる・デ・ノンノンがホワイエに登場。彼女のキュートなパフォーマンスに人の輪ができてゆく。続くロビーパフォーマンスとして現れたのは本日唯一のバンド出演となる、ザッハトルテ(アコーディオン、ギター、チェロ)。人の輪は崩れることなく、なめらかな音色に心はいざなわれる。
さあ、開演の時間だ。舞台にはズラリと椅子が並べられている。舞台に向かって左からアコーディオン/佐藤史朗、デイヴィッド・ファーマー、モレノ・ブソレッティ、田ノ岡三郎、coba、檜山学、佐藤芳明、バンドネオン/早川純、川波幸恵、三浦一馬が並んでのアコーディオン&バンドネオン・オーケストラ。
開催の挨拶の後、アコーディオン/モレノ・ブソレッティがソロパートをつとめ、それぞれがオーケストラパートを引き受けてのヴァイオリン曲『チャールダーシュ』からスタート。確かに、今年は何かが違うようだ。
バンドネオンの気鋭プレイヤー三人による『カミニート』、さらにガレージシャンソンショーで毎年注目を浴びている佐藤芳明を加えてのカルテットで、早川純のオリジナル曲『CLAY』を披露。
普段はバロック音楽が主体のクラシックアコーディオニスト、デイヴィッド・ファーマーは、アコーディオニスト全員を率いてピアソラの『Five Tango Sensations Nr.3 Anxiety』を演奏。「ピアソラでもめったに演奏されない曲、なんでこの曲を選んだの?」とcobaの絶妙な突っ込みを受ける。
全員での演奏からそれぞれのソロ、時にはデュオ、アコーディオンとバンドネオンのコラボレーション……と一曲一曲編成を替え、オリジナル曲はもとより、タンゴ、映画音楽、ブラジル音楽に至るまで、斬新なアレンジをほどこして進行していく。
休憩をはさみ、フランスから来日したルドウィック・ベイヤーがゲストとして登場。ローランドの最新鋭デジタル・アコーディオンFR-7bでの超絶早弾き『ハンガリアンダンス』に会場は拍手喝采。cobaはMCでアコーディオンやバンドネオン調律師の高齢化に触れ、「この新しい楽器がアコーディオンの普及につながるように、また、若い世代の活躍を心から願っている」と、アコーディオン界の現状、Bellows Lovers Nightに向かう真摯な姿勢を打ち明けた。
さて、ここからはアコーディオンに魅せられた異色の2組の登場だ。
人気コミックバンド、ポカスカジャン。リーダー、大久保ノブオは、cobaと同郷(長野県)というだけでアコーディオンを持たされたと、笑いを誘う。メンバーと共に楽しい音楽ネタで場内を沸かせ、『きよしこの夜』をソロで演奏。これからもアコーディオンを続けていくと誓った。
続いて、TV番組の企画をきっかけにcobaと出会い、すでに3年連続出場となる、やるせなす・中村豪が登場。「3年続いたら趣味だから」と、中村に語りかけるcoba。今年はポカスカジャンというライバルが出てきた事に、負けられない3年目の意地で、『星に願いを』を披露。「来年は、やるせなすの相方・石井と二人で参加します」と力強く宣言した。
気がつけば、時計はすっかり遅い時刻を示している。最後はアコる・デ・ノンノンとザッハトルテの都丸智栄を加え、メンバー全員でcobaの名曲『過ぎ去りし永遠の日々』、そしてBellows Lovers Nightのテーマ曲『吠えろベローズ!』では迫力あるソロの掛け合いを繰り広げ、名残を惜しみつつライブは幕を閉じた。
今年ほどじっくりとアコーディオン・バンドネオンに向き合ったBellows Lovers Nightがあっただろうか。観客の誰もが、気がつけば蛇腹のうねりと呼吸を合わせていた。魂をもった生き物のように息づいている蛇腹とは、何と人間味のある、生命感あふれる楽器なのだろうか。
新たなる年へ、"蛇腹サウンド"のさらなる飛躍を感じながら、
キリンラガービールで、乾杯。
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